事業報告書

公益財団法人仏教美術研究上野記念財団
平成27年度 事業報告書  

 

1.仏教美術に関する調査研究事業

@「禅宗における『人』と『美術』を中心とした東アジアと日本との交流」をテーマにした研究活動
 2カ年の研究計画「禅宗をめぐる美術および文化事象の多面的研究」の第1年次として、以下のメンバーによる
共同研究で建仁寺、天龍寺、妙心寺など京都近郊の禅宗寺院の所蔵作品を中心に調査研究した。
特に、肖像彫刻と唐物について重点的に分析し、あわせて未刊行の文献資料を収集した。

◇共同研究者
・赤尾栄慶(当財団研究委員会委員、京都国立博物館名誉館員)
・井上一稔(同志社大学文学部教授)
・福島恒徳(花園大学文化遺産学科教授)
・古川元也(神奈川県立歴史博物館主任学芸員)
・大原嘉豊(京都国立博物館主任研究員)
・浅見龍介(京都国立博物館列品管理室長)
・山川 曉(京都国立博物館教育室長)
・羽田 聡(京都国立博物館主任研究員)
・末兼俊彦(京都国立博物館研究員)
・福士雄也(京都国立博物館研究員)
共同研究代表者は羽田聡とする。         
 

 研究活動の成果は平成27年8月30日、京都国立博物館で開催した「平成27年度研究発表と座談会 禅宗における『人』と『美術』を中心とした東アジアと日本の交流」で発表した。全国から研究者、市民ら約百人が参加し、福島恒徳氏(花園大学)が「中国絵画と日本禅林の絵画」、山川暁氏(京都国立博物館)が「南北朝時代の袈裟観」、橋本雄氏(北海道大学)が「請来大蔵経と室町幕府・京都五山―朝鮮半島から日本への蔵経移転の実態をさぐる―」のテーマで、それぞれ研究発表した。これに続き、浅見龍介氏(東京国立博物館、当時・京都国立博物館)が加わり、羽田聡氏(京都国立博物館)の司会で活発な論議が繰り広げられた。また、その内容は28年4 月12日から5月22日まで京都国立博物館で開催の特別展覧会「禅─心をかたちに─」の展示内容に反映させることとした。
 「研究発表と座談会」の内容は、本財団の研究報告書第42冊『禅宗における「人」と「美術」を中心とした東アジアと日本の交流』として28年3月に刊行し、国内外の研究者および研究機関、図書館など約500か所に配布した。

A 仏教美術作品のマイクロフィルムのデジタルデータ化
 本財団の研究活動で撮影した書跡、絵像などの仏教美術作品のマイクロフィルムが約70巻ある。資料の劣化、滅失を防ぐとともに、幅広く活用されることを目指してデジタルデータ化に取り組んできた。2年目にあたる27年度で、財団が所有するマイクロフィルムすべてのデジタルデータ化を終えた。


2.若手研究者育成を目的とした研究奨励金給付事業

 大学院博士後期課程の在籍者を対象にした制度である。27年度から受給者を「3人」から「5人以内」に増やした。外部の学識経験者を含めて構成する本財団の給付選考委員会で以下の4氏を受給者に選び、各10万円を支給した。
   伊藤 久美  (東北大学大学院)
   熊坂 聡美  (筑波大学大学院)
   高志  緑  (大阪大学大学院)
   中村 夏葉  (名古屋大学大学院)

以上



公益財団法人仏教美術研究上野記念財団
平成26年度 事業報告書  

 

1.仏教美術に関する調査研究事業

@「南都と南山城をめぐる僧と造仏」をテーマにした研究活動
 2カ年の研究計画「南山城地域における仏教文化の伝播と変容」の第2年次として、
10 世紀から 14 世紀にかけての南山城地域の浄瑠璃寺、海住山寺、笠置寺、光明山寺跡、
禅定寺などと、南都の東大寺、興福寺との関わりを、僧侶の動向や仏像制作の側面から 探った。
以下のメンバーで共同研究を行った。
 
・井上一稔(当財団評議員、同研究委員会委員、同志社大学教授)
・藤岡穣(大阪大学大学院教授)
・田中健一(大阪大谷大学講師)
・赤尾栄慶(当財団研究委員会委員、京都国立博物館上席研究員)
・淺湫毅(当財団研究委員会委員、京都国立博物館保存修理指導室長)
・宮川禎一(京都国立博物館企画室長)
・山川曉(京都国立博物館教育室長)
・大原嘉豊(京都国立博物館主任研究員)
・末兼俊彦(京都国立博物館研究員)

 研究活動の成果は、京都国立博物館で開催された特別展覧会「南山城の古寺巡礼」
(平成 26 年 4 月 22 日〜6 月 15 日)の展示に反映させた。
 さらに、特別展開催中の 5 月 12 日には「研究発表と座談会    南都と南山城をめぐ る僧と造仏」を 開催した。
 「研究発表と座談会」には全国から仏教美術の研究者ら約 90 人が集まり、一般市 民約 40 人が聴講した。
 淺湫毅氏(東京国立博物館)が「浄瑠璃寺の九体阿弥陀と四天王像をめぐって」、 岩田茂樹氏(奈良国立博物館)が「海住山寺四天王像とその周辺−大仏殿様四天王像 再考−」、横内裕人氏(京都府立大学)が「南山城の宗教環境−山寺というトポス−」 と題して、それぞれ研究発表した。このあと、発表者3氏に藤岡穣(大阪大学大学院)、 井上一稔(同志社大学)、浅見龍介(京都国立博物館)の各氏らが加わって活発な議 論を展開した。
 「研究発表と座談会」の内容は当財団の研究報告書第 41 冊として平成 27 年 3 月に 刊行し、国内外の研究者、研究機関、図書館など約 500 カ所に寄贈した。

A仏教美術作品のマイクロフィルムのデジタルデータ化
 これまでの研究活動で撮影した書跡、絵像などの仏教美術作品のマイクロフィルム約 70 巻を順次、デジタルデータ化する事業を始めた。初年度は、35 ミリフルサイズ 8,384コマ、ハーフサイズ 11,853 コマをスキャニングして外付けハードディスクに格納し た。

B京都国立博物館で開催した展覧会に関連する諸事業
 平成 27 年 1 月 2 日〜2 月 15 日に開催された「山陰の名刹・島根鰐淵寺の名宝」展に 合わせ、同博物館と協力して展覧会のチラシ 15,000 枚、ポストカード 4 種各 2,000 枚 を作成した。来場者に仏教美術への関心をより深めてもらうため、チラシ、ポストカー ドは無料で配布し、好評だった。



2.若手研究者育成を目的とした研究奨励金給付事業

 当財団が公益財団法人へ移行したのを記念して平成 25 年度に創設した事業の 2 年目
である。対象者は大学院博士後期課程在籍者 3 名(以内)で、給付額は各年額 10 万円 (返済不要)。
 当年度分は 25 年 12 月 1 日に募集を開始し、7 名が応募。26 年 3 月 11 日に開いた当 財団の研究奨励金給付選考委員会で、森井友之(同志社大学大学院)、橋本遼太(大阪 大学大学院)、温静(東京大学大学院)の3氏を選び、26 年 4 月に奨励金を給付した。
以上

 
 
平成25年度 事業報告書  

 

1.仏教美術に関する調査研究事業

◇事業の概要
 「南山城地域を中心とした仏教文化の伝播と変容」を2カ年にわたって研究することとし、初年度は時代区分を上代において研究を進めた。同計画に関連して、岐阜市の美江寺を現地調査した。
 
◇共同研究者
・井上一稔(当財団評議員、同研究委員会委員、同志社大学教授)
・藤岡穣(大阪大学大学院教授)
・田中健一(大阪大谷大学講師)
・赤尾栄慶(当財団研究委員会委員、京都国立博物館上席研究員)
・淺湫毅(当財団研究委員会委員、京都国立博物館保存修理指導室長)
・宮川禎一(京都国立博物館企画室長)
・山川曉(京都国立博物館教育室長)
・大原嘉豊(京都国立博物館主任研究員)
・末兼俊彦(京都国立博物館研究員)

◇研究目的
 地域を越えた仏教文化の伝播と変容の過程を考える上で、それぞれの土地が持つ風土や 地理的な要因が与える影響はけして小さくない。日本国内における仏教史や文化史から見た南山城地域は、京都と奈良との中間地点にある地理的な特徴を持ち、それに伴って摂関家や社寺の抱える多数の荘園が複雑に入り組む地域である。その結果、同地域において展開された仏教文化にもさまざまな影響関係が見て取れる。
 また、地理的要因が仏教文化に与えた影響関係をより深く理解するために、南山城地域以外の補足研究として、京都・奈良から距離を隔てた近江の状況や、京都と鎌倉の中間地域である東海地方の状況を念頭に置きながら、古代から中世における日本国内の仏教文化の伝播と地域における変容の実態に迫ることを目的とした。

◇研究実績
 南山城地域の一休寺・観音寺・壽寶寺・禅定寺などが所蔵する彫刻作品を重点的に調査、研究した。
 平成25年10月14日、京都テルサ(京都市南区)で開いた「研究発表と座談会」では、中島正(木津川市役所)、田中健一(大阪大谷大学)、寺島典人(大津市歴史博物館)の3氏が研究発表し、井上一稔氏の司会で座談会を開いた。座談会には発表者3氏のほか、淺湫毅(京都国立博物館)、伊藤太(京都府教育委員会)両氏が加わった。聴衆は一般市民約20人を含め約100人だった。なお、研究発表と座談会に先立って9月29日、発表者や
研究グループのメンバーらが南山城・馬場南遺跡などを現地見学した。
 「研究発表と座談会」の内容は当財団の研究報告書第40冊『上代の南山城における仏教文化の伝播と受容』として刊行し、国内外の研究者、研究機関に寄贈した。これらの研究成果は、平成26年4月22日〜6月15日に京都国立博物館で開催の特別展覧会「南山城の古寺巡礼」の展示内容や講演会に活用させることにしている。 このほか、26年3月15、16の両日、研究グループのメンバーらが岐阜市・美江寺を調査し、国指定重要文化財「乾漆十一面観音立像」の内部にデジタルファイバースコープを挿入して、同像が享保18(1733)年に大規模な修理を施されていたことを突き止めた。

2.平成25年度若手研究者への研究奨励金給付事業
 
 当財団が平成25年4月1日、公益財団法人へ移行したのを記念して、若手の研究者を育成するため研究奨励金給付事業を創設した。対象は大学院博士後期課程在籍者で、3名に年額10万円を給付するものである。
 初年度の受給者については、平成24年12月1日、に募集を開始し、6名が応募。平成25年3月18日に開いた当財団の研究奨励金給付選考委員会で、西木政統(慶應義塾大学大学院)、鏡山智子(大阪大学大学院)、李智英(九州大学大学院)の3氏を選び、4月に入って各10万円を給付した。年度末には3氏から「研究実績報告書」が届いた。
                                                                  以上


 
平成24年度 事業報告書  

 

1.仏教美術に関する調査研究事業

 □研究主題 「鎌倉仏教とその造形」
仏教史や文化史から見た鎌倉時代は、貴族社会から武家社会への移行に伴い、法然・親鸞・日蓮・明恵・一遍らが活躍し、浄土宗・禅宗・日蓮宗などのいわゆる鎌倉新仏教が誕生した時代であった。
仏教美術からみれば、平安時代後期に続いて、法華経や浄土経典を中心的柱としながら、思想的・信仰的に多様な展開をみせていった。法華経は、その思想内部に造塔・造像の奨励を説き、浄土宗関係の教義は必ずしも造像や写経などの作善を促さない傾向があった。仏教彫刻に関しては、運慶・快慶の活躍によって、南都の復興と平安時代院政期には見られない躍動的で力強い表現の造像が行われた。
本研究は4か年計画の継続研究として、鎌倉仏教を中心とした宗教的造形の展開を、絵画・彫刻・書跡・工芸・図像などの具体的遺品を通じて探り、研究のための資料を収集してきた。平成24年度は研究計画の最終年度に当たり、京都・仁和寺などの所蔵品を調査するとともに、「研究発表と座談会」を開催し、研究報告書を刊行した。

 □研究態勢
赤尾栄慶・京都国立博物館上席研究員ら同館研究員を中心とした共同研究。

 □調査対象
・京都・神護寺所蔵の冷泉為恭模本山水屏風の調査と撮影
・京都・仁和寺御経蔵の守覚法親王関係聖教の調査と撮影
・京都・醍醐寺所蔵の重要文化財「十天形像」「山水屏風」の調査と撮影
・愛知県美術館所蔵の木村定三コレクションの仏画調査

 □研究発表と座談会
平成25年1月14日、京都テルサ(京都市南区)で、「仁和寺御流を中心とした院政期真言密教の文化と美術」をテーマに開催した。参加者は約90人。
東京大学大学院工学系研究科教授・藤井恵介氏が「中世建築指図と密教美術研究」、京都国立博物館研究員・大原嘉豊氏が「院政期における灌頂儀礼と守覚法親王〜十二天屏風と山水屏風の成立に関連して」、愛知県立大学日本文化学部教授・上川通夫氏が「院政期真言密教の社会史的位置〜大治と建久の間」と題して報告し、大阪大谷大学文学部教授・宇都宮啓吾氏の司会で座談会を行った。
この研究発表と座談会は財団ホームページで広報した。また朝日新聞文化面に案内記事が掲載された。参加者のうち約15人は往復はがきやメール、電話などで申し込んだ一般市民だった。

 □研究報告書
研究報告書を2冊刊行した。
@第38冊『研究発表と座談会 浄土宗の文化と美術』は平成23年度に開いた研究発表と座談会の報告書である。版下を23年度に制作していた。24年度に1000部刊行し、国内外の研究機関、研究者らに550部を寄贈した。残部は京都国立博物館ミュージアムショップにおいて、印刷原価で頒布している。
A第39冊『仁和寺御流を中心とした院政期真言密教の文化と美術』は上記の研究発表と座談会の報告書である。刊行は1000部。25年度に第38冊と同様、国内外の研究機関、研究者に寄贈し、一般にも頒布する。


2.若手研究者への研究奨励金給付事業を準備

 大学院博士後期課程の在籍者3名を対象に年額10万円を給付する「若手研究者への研究奨励金給付事業」を平成25年度にスタートさせるため、給付規程、選考委員会設置運営規則などを理事会・評議員会で議決した
平成25年度の受給者については、平成25年3月18日に選考委員会を開催して3名を選考した。(給付金の送金は25年度)

 

3.公益財団法人への移行を準備
平成24年6月26日、内閣総理大臣に対して移行認定申請書を提出した。
平成25年3月21日、内閣総理大臣より認定書を交付された。
(*平成25年4月1日移行登記した) 
                                                                 以上


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