1.仏教美術に関する調査研究事業
@仏教美術における工房をめぐる諸問題の研究
◇共同研究者
・井上一稔 (当財団評議員、同研究委員会委員、同志社大学教授)
・赤尾栄慶 (当財団評議員、同研究委員会委員、京都国立博物館名誉館員)
・伊藤信二 (京都国立博物館企画室長)
・淺湫 毅 (当財団研究委員会委員、京都国立博物館連携協力室長)
・山川 曉 (京都国立博物館工芸室長)
・大原嘉豊 (京都国立博物館保存修理指導室長)
・羽田 聡 (京都国立博物館美術室長)
・井並林太郎(京都国立博物館企画室研究員)
・上杉智英 (京都国立博物館)
・皿井 舞 (東京国立博物館絵画彫刻室研究員)
・山口隆介 (奈良国立博物館研究員)
・佐々木守俊(岡山大学准教授)
・奥健夫 (文化庁、座談会の司会担当)
(研究代表者は淺湫毅とする)
◇研究目的
仏教美術は、信仰の対象である反面、職能的手工業産品としての側面も有する。この観点は、その生産を可能にした体制、つまり工房の問題へと連動する。これに関しては社会経済史的観点からの先行研究も既に存在する所である。
仏師としての鞍作止利や聖徳太子の画師制度という部民制を基礎とした初期的段階からそれを基礎に確立した奈良時代の官営工房体制、及びその衰退後に展開する工房の存在様態には、供給に対する需要の側の動き、すなわち、需要の前提となる仏教美術の注文階層や経済史的要件はもちろんのこと、信仰的、様式的な問題など様々な検討課題が存在している。例えば、仏師、絵仏師については、平安時代中期、十一世紀に僧綱位が授与され、その社会的地位が確立したことが知られているが、その後、彼らが主に活躍する場となった仏所や絵所座についてはまだまだその史的展開については考えるべき余地がある。更に、金工などの工芸分野に目を転じると、未解明の点が多く、彫刻・絵画分野との落差とその原因など大きな問題として横たわっている。本研究では、かかる仏教美術の生産の主体となった工房の実態やその展開に迫ることを目的とする。
絵画・彫刻・書跡・工芸などの諸分野を縦断する形で資料を収集し、研究を行う。加えて、資料の公開、研究座談会の開催を通じて仏教美術研究の発展に資せんことを期するものである。
◇研究計画
本研究は、平成29年度からの2カ年の継続事業とする。平成29年度は絵仏師に関する諸問題が中心テーマだったが、平成30年度は木彫像を中心として立体の仏像製作にたずさわった仏師と、その工房である仏所に関する調査研究を重点的に行う。さらに、未刊行の文献史料を収集する。これらの成果は、研究者らを対象にしたシンポジウム(平成30年9月2日開催予定)で公開、発表するとともに、平成30年8月8日〜9月9日に京都国立博物館で開催予定の特集展示「百万遍 知恩寺の名宝」および名品ギャラリー「日本の彫刻」の展示内容に反映させ、一般市民にも還元する。
シンポジウムの内容は『研究発表と座談会 仏師と仏所をめぐる諸問題』(研究報告書第45冊)として平成30年度内に刊行し、国内外の研究者、研究機関、図書館などに配布、一般市民には印刷原価で頒布する。
◇研究方法
a.新資料、および必要な資料で未撮影のものは、その都度調査し、撮影する。
b.既に撮影された学術写真の焼き付け、及びデジタルデータ化を行う。
c.撮影原板、焼き付け、およびデジタルデータは、公益財団法人仏教美術研究上野記念財団の購入によることを明記し、京都国立博物館に寄贈する。
d.研究資料等は、その整理完了後、適宜一般研究者に公開する。
e.シンポジウム、研究座談会に際して、テーマに関する有用な資料を作成、配布する。
A仏教美術資料の収集
京都府寺院重宝調査台帳や敦煌写経をはじめ貴重な仏教美術作品などのマイクロフィルムのデジタルデータ化を進め、調査研究の活性化を目指す。研究グループを中心に、各地の研究者を募って新たな研究の視座を模索する。
2.若手研究者育成を目的とした研究奨励金給付事業
当財団の若手研究者研究奨励金給付選考委員会が選んだ大学院博士後期課程在籍者3名(以内)に対して、各学年20万円を給付する。3月9日の給付選考委員会で選んだ村上幸奈、宮ア晴子、因幡聡美の3氏から在学証明書の提出を受けて4月末までに支給する。
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