1.仏教美術に関する調査研究事業
□研究主題 「鎌倉仏教とその造形」
仏教史や文化史から見た鎌倉時代は、貴族社会から武家社会への移行に伴い、法然・親鸞・日蓮・明恵・一遍らが活躍し、浄土宗・禅宗・日蓮宗などのいわゆる鎌倉新仏教が誕生した時代であった。
仏教美術からみれば、平安時代後期に続いて、法華経や浄土経典を中心的柱としながら、思想的・信仰的に多様な展開をみせていった。法華経は、その思想内部に造塔・造像の奨励を説き、浄土宗関係の教義は必ずしも造像や写経などの作善を促さない傾向があった。仏教彫刻に関しては、運慶・快慶の活躍によって、南都の復興と平安時代院政期には見られない躍動的で力強い表現の造像が行われた。
本研究は4か年計画の継続研究として、鎌倉仏教を中心とした宗教的造形の展開を、絵画・彫刻・書跡・工芸・図像などの具体的遺品を通じて探り、研究のための資料を収集してきた。平成24年度は研究計画の最終年度に当たり、京都・仁和寺などの所蔵品を調査するとともに、「研究発表と座談会」を開催し、研究報告書を刊行した。
□研究態勢
赤尾栄慶・京都国立博物館上席研究員ら同館研究員を中心とした共同研究。
□調査対象
・京都・神護寺所蔵の冷泉為恭模本山水屏風の調査と撮影
・京都・仁和寺御経蔵の守覚法親王関係聖教の調査と撮影
・京都・醍醐寺所蔵の重要文化財「十天形像」「山水屏風」の調査と撮影
・愛知県美術館所蔵の木村定三コレクションの仏画調査
□研究発表と座談会
平成25年1月14日、京都テルサ(京都市南区)で、「仁和寺御流を中心とした院政期真言密教の文化と美術」をテーマに開催した。参加者は約90人。
東京大学大学院工学系研究科教授・藤井恵介氏が「中世建築指図と密教美術研究」、京都国立博物館研究員・大原嘉豊氏が「院政期における灌頂儀礼と守覚法親王〜十二天屏風と山水屏風の成立に関連して」、愛知県立大学日本文化学部教授・上川通夫氏が「院政期真言密教の社会史的位置〜大治と建久の間」と題して報告し、大阪大谷大学文学部教授・宇都宮啓吾氏の司会で座談会を行った。
この研究発表と座談会は財団ホームページで広報した。また朝日新聞文化面に案内記事が掲載された。参加者のうち約15人は往復はがきやメール、電話などで申し込んだ一般市民だった。
□研究報告書
研究報告書を2冊刊行した。
@第38冊『研究発表と座談会 浄土宗の文化と美術』は平成23年度に開いた研究発表と座談会の報告書である。版下を23年度に制作していた。24年度に1000部刊行し、国内外の研究機関、研究者らに550部を寄贈した。残部は京都国立博物館ミュージアムショップにおいて、印刷原価で頒布している。
A第39冊『仁和寺御流を中心とした院政期真言密教の文化と美術』は上記の研究発表と座談会の報告書である。刊行は1000部。25年度に第38冊と同様、国内外の研究機関、研究者に寄贈し、一般にも頒布する。
2.若手研究者への研究奨励金給付事業を準備
大学院博士後期課程の在籍者3名を対象に年額10万円を給付する「若手研究者への研究奨励金給付事業」を平成25年度にスタートさせるため、給付規程、選考委員会設置運営規則などを理事会・評議員会で議決した
平成25年度の受給者については、平成25年3月18日に選考委員会を開催して3名を選考した。(給付金の送金は25年度)
3.公益財団法人への移行を準備
平成24年6月26日、内閣総理大臣に対して移行認定申請書を提出した。
平成25年3月21日、内閣総理大臣より認定書を交付された。
(*平成25年4月1日移行登記した)
以上 |